さて、新しい本のために来る日も来る日も『ティファニーで朝食を』のホリー・ゴライトリーについて考える日々ですが(嘘)、調べれば調べるほどに「原作のホリーのイメージはオードリー・ヘプバーンよりマリリン・モンローにぴったり」っていうのを、「正解」であるかのように振りかざすのは間違いだということに対する確信が高まってきます。 なるほ
ど、原作者のトルーマン・カポーティは映画化の際、ホリーの役に親しかったマリリンを推しました。後年はジョディ・フォスターの名前を挙げています。私はこの事実が逆にバイアスとなって、「ホリーはマリリン・モンロー」っていう先入観を育てているんじゃないかと思います。
皆さん、トルーマン・カポーティは嘘つきなんですよ?
ホリー・ゴライトリーのモデルについては諸説ありますが、カポーティ自身にそのことを聞くと、結構トンでもないホラを吹いたことで知られています。
「…その身体はいかにも上品で細かったものの、彼女には朝食用のシリアルを思わせるような健康な雰囲気があり、石鹸やレモンの清潔さがあった。両方の頬には飾り気のないピンクの色が濃く差していた。口は大きく、鼻は上を向いていた。(中略)子供時代は過ぎていたが、まだ女にはなりきっていない顔だ。十六歳から三十歳のどの年齢と言われても不思議はない」『ティファニーで朝食を』
これでマリリンが思い浮かびますか? あるいはジョディ・フォスターが?
事実、カポーティにマリリンを推薦されたプロデューサーも、彼の言うことがサッパリ理解出来なかったそうです。それにその頃マリリンは既に遅刻癖や不安定な精神状態のせいで、スタジオとしては使いにくい女優になっていました。映画の製作陣でマリリンを使うことに乗り気な人はゼロ。プロデューサーは「まったくセクシーでない女優にセクシーな役をやらせる」ことでホリーのイメージをつかもうとします。
ちなみにオードリー・ヘプバーンはプロデューサーのセカンド・チョイスでした。どうせ断るだろうと思われていたのです。私も昔は、オードリーはミスキャストだと思っていましたが、今ではオードリーがホリーを演じたことには大変な「意味」があると思っています(これが次の本のテーマです)。
では、プロデューサーのファースト・チョイスは誰だったのか? スケジュールの都合で実現しませんでしたが、彼女の名前を見たとき、膝を打ちました。そうだ、彼女がいたんだ
よ!!!!
200点満点の正解です。
『ティファニーで朝食を』のリメイクというのは夢の企画らしく、何度かささやかれたことがありましたが、私の心の中では次にこの作品が映画化される時は、トルーマン・カポーティ自身である主人公をクリス・コルファーが演じることになっています。原作通りにナイーヴなゲイの少年と彼の憧れの女の子の物語にして欲しい。

ちなみにカポーティはプロデューサーに最初に会ったとき、自分自身が主人公の役を演じるつもりだと言ったそうです。彼を怒らせたくないプロデューサーは「トルーマン、男の役はこの映画では添え物だ。君にはもっと目立つダイナミックな役が似合う」と説得。ちょっと考えてカポーティ、「そうね、僕にはもっと大きな役がふさわしい」何ならこのくだりもクリスに演じて欲しい。
でも、いま現在、ホリー・ゴライトリーにふさわしい女優って誰かいるでしょうか? 90年代だったら、『KIDS』でデビューした頃のクロエ・セヴィニーが似合いそうだったと思うのですが…。誰がいいかなあと色々夢想してしまうのです。