
この間、高円寺に行ったときに見つけた「十五時の犬」という古本屋さんは、久しぶりに心ときめくようなお店だった。天井まで張り巡らされた本棚にびっしり私好みの本が並ぶ。そこでずっと欲しいと思っていた『女たちの時間 レズビアン短編小説集』を安価で手に入れた。
「レズビアン」という言葉で人がイメージするものは色々だが、ここで取り上げられているのは女同士の恋愛や性愛を描いた作品というよりは、もっと広い範囲での女性同士の交流、シンパシーやふとした心のつながり、友愛、思慕、様々な形の「愛」である。そして友情でも姉妹間の愛でも、それが「愛」である以上はエロティックな要素がどこかにあるものなのだ。露骨ではない、ふわりと香り立つような官能を感じるラインナップだった。選者で翻訳も務めた利根川真紀さんはこのアンソロジーを作った時、まだ三十代のはずだ。素晴らしい仕事だと思う。
ウィラ・キャザー、ケイト・ショパン、キャサリン・マンスフィールド、ヴァージニア・ウルフ、デュナ・バーンズ、カーソン・マッカラーズ、ジェイン・ボウルズと「文学乙女の必修科目」とでも言いたいような名前が並ぶ。どの短編も傑作だったが、とりわけセアラ・オーン・ジョエットの二編に心が震えた。つつましやかな女の献身が報われる瞬間に涙せずにいられない「マーサの愛しい女主人」と、孤独と引き換えに少女が守り抜いた自由な魂を野性の鳥の姿に託した「シロサギ」。この作家の作品が(日本語で)読める本がこれしかないだなんて!
イサク・ディーネセンの「空白のページ」がラストに置かれている、その構成も心憎いばかり。
どこかで見かけたら絶対に買うべきアンソロジーの名作である。







