2011年5月28日土曜日

ウェス・アンダーソンの『アメリカの夜』





『ふたりのヌーヴェル・ヴァーグ』を試写で見た。

フランソワ・トリュフォーとジャン=リュック・ゴダールの友情の終焉を描くドキュメンタリーだが、トリュフォーの『アメリカの夜』をめぐる手紙のやりとりによって二人が絶縁したところで、ふっと終わってしまうのがせつない。トリュフォーの死後、『ゴダールのリア王』で「フランソワ、僕はどうしたらいいんだ」ってゴダールが訴えるシーンは許可が下りなかったの?

トリュフォーとゴダール、双方と仕事をした「男子ミューズ」ジャン=ピエール・レオの演技を久しぶりに見て、ある時期以降のジェイソン・シュワルツマンが彼のアクションに非常に影響されていることもが確認出来た。2000年くらいのインタビューで、ジェイソンは「アントワーヌ・ドワネルの冒険」シリーズへの愛を表明している。素人探偵を演じる「Bored to Death」の彼の動きは、『夜霧の恋人たち』のレオーに非常によく似ている。

そして、ウェス・アンダーソンが監督したアメックス・カードのCMである。トリュフォーの『アメリカの夜』を下敷きにしたこのコマーシャルで、ジェイソン・シュワルツマンはジャン=ピエール・レオの役をやっている。




『アメリカの夜』予告編(スペイン語版)



ゴダールはけなした『アメリカの夜』ですが、私は好きなトリュフォー作品の上位に入ります。

2011年5月27日金曜日

営業報告



水曜日、FM東京の「オーシャン・ブルー」に出演して『イノセント・ガールズ』について話しました。番組にメッセージを下さった方、ありがとうございます。

現在発売中のシュプール、DVD連載の他に「通勤文庫」で、電車の中で読むとよさそうな本を紹介しています。

CDジャーナルのウェブ版で、新譜を出した
ガガ子について長谷川町蔵くんと対談しています。
ガガ子を見ると、もれなくバックにマーク・カネムラがついてくるのが嬉しいね。濃い顔だからすぐにどこにいるか分かるし。

「アメリカン・ダンス・アイドル」でのマーク。



雑誌の方のCDジャーナルでは、2004年にウィーン国立歌劇場で上演されたオペラ『ドン・カルロス』における過激な演出について文を書いています。

2011年5月20日金曜日

ポストMADMENのドラマ二本


 みんなが大好き『MADMEN』、今年はお休み。
 ということで、HBOに対抗してabcとNBCが「60年代前半風俗ドラマ」を仕掛けます!

 abcは『Pan Am』


 いい仕事で夢の生活といい男をゲット!スチュワーデスたちの野心!



 そしてNBCは『The Playboy Club』


 シカゴの「プレイボーイ・クラブ」で働くバニーたちの悲喜こもごも! クラブを舞台に渦巻く陰謀! 謎の男! 隠蔽された殺人! と『MADMEN』にも程がある。



 私は60年代前半の風俗が好きなので、どちらも見たい。
 それにしても、アメリカは60年代顔の俳優を揃えてきますね。
 『Pan Am』のヒロインはケリ・ガーナー、
 『The Playboy Club』のバニーちゃんはアンバー・ハードか。『CSI:マイアミ』を降ろされた(『アグリー・ベティ』の体育教師役でもおなじみ)エディ・シブリアンは起死回生で第二のジョー・ハムになれるのか?

2011年5月19日木曜日

四月後半のベスト10



・巴里案内・マダム・マサコ
千円台で購入。マダム・マサコのちょっと乱暴な口調の文章は、岸恵子の声を当てて読むと粋な感じがして楽しめる。


マリー・アントワネットの画家 ヴィジェ・ルブラン展 三菱一号館美術館
多くの人と同じく、私はこの画家を若桑みどりさんの
『女性画家列伝』で知った。彼女のポートレートが見られてよかった。他の宮廷画家たちの作品も、その背後の「物語」と併せて見ると色々興味深い。グッズがみんなラデュレっぽいのはご愛嬌。

・レア・サーステインのイタリアン・ヴォーグのための
セッティング

Strange Beauty/Simone Dinnerstein
私はこの美しきピアニストが弾くバッハに夢中なのです。

・その夜は忘れない
フィルムセンターにて。『魚が出てきた日』と同じく、2011年に見たことに意味がある映画、になってしまった裏『ヒロシマ・モナムール』。原爆記念館を歩く田宮二郎に被さる被爆者の証言と音楽が一体となったミュージック・コンクレート的なサウンド・トラックと映像があまりにスタイリッシュ。そうした鋭さはあやや登場以降のメロドラマパートでは失われるのだけど。でもいい映画!

・青い野獣・裏階段
神保町シアター、ダメ男シリーズ後半戦。『裏階段』は良くも悪くも井上梅次クオリティで、チープなところも含めて安心して楽しめた。司葉子でなくてもいい役のような気がしたけれど。私は田宮二郎がスクリーンで見られれば満足。『青い野獣』も司葉子が出演。全体的に面白かったけれど、とにかく「キッチン・サド」が忘れられない。あの店を見つけた仲代達矢が「使える」と思って、メモしていたんじゃないかと思うだけでも笑える。

・Le Sarte Pettegoleのシャツドレス。イタリアのシャツ・メーカーらしく、細かいディテールがとてもきれいで着やすい。


パコ・イ・ロラ [2008] ボデガス・ロサリア・デ・カストロ
ロイヤル・ウェディングを見ながら、この濃厚なスペインの白ワインを飲んでいた。ラベルだけでなく、コルクも水玉なのが可愛い!

・モールス
最近、試写に行けていなかったのだけど、これは見ることが出来てよかった。オリジナルよりずっと好き。好きな理由は色々とあるので、その内ちゃんと(どこかで)感想を書きます。

・「Glee」 Never been Kissed
神回。これで「Teen Age Dream」はスタンダードとなった。

洋食の朝日




ゴールデン・ウィーク、神戸に行ってきました。


どうしても神戸でおいしいビフカツが食べたい! と思って向かったのが「洋食の朝日」



 いかにも町の洋食屋さんらしい、素敵な店でした。お隣は(閉まっていたけれど)「ボタンと裏地の店」だった。

 忙しく働いているウェイトレスの一人、ふっくらとした女子が食べ終わったテーブルを片付ける様子がとてもきれいで、汚れた食器を積み上げる手順さえ考え抜かれていて、機能的で、自然で、見ていて惚れ惚れしてしまった。




 そして絶品としか言いようがないビフカツです。ジューシーで、カリっとしていて、ああ…!



 常連らしき家族が食べていた唐揚げやポークチャップもおいしそうだった。次に来る機会があったら食べてみたい。

でも、またビフカツを頼んでしまうかもしれない。


営業報告

OHARA)

「FRaU」の読書コーナーで『イノセント・ガールズ』についてインタビューに答えて、元気が出るたくましい女たちの本の数々を紹介しています。
その中の一冊、
『明治の女子留学生』で知った津田梅子や大山捨松たちの米国留学とその後の人生の話、「これを何故大河ドラマにしないのだ…」という面白さです。今のスウィーツ大河よりもずっと面白い「女性が主人公の大河ドラマ」になりそうなのに!

Biglobeの
Kirei Styleでは「胸キュン&恋する気持ちよみがえる恋愛小説」を紹介しています。

「文學界」に津村記久子さんの
『ワーカーズ・ダイジェスト』の書評を書いています。

「PHPスペシャル」には「涙」と「笑い」のBOOK&DVDガイドを書いています。


来週の水曜日朝、FMラジオでちょっとしゃべることになりそうです。詳細はいずれ。

2011年5月10日火曜日

あなたに捧げる文章



matchbook magazineの最新号がアップされていますね。

この雑誌、毎号「matchbook Girlはこんな女子」っていうコーナーがあって好きです。今号だったら、


・一日休暇を取って美術館に行く

・フレッド・アステアのように踊り、ケイリー・グラントのように服を着こなす伊達男を夢見る

・名画は全部地元の映画館で見る

・昼の野球場は夜の街に勝ることを知っている

・ジェイン・オースティンとヴァージニア・ウルフの小業について討論できる

・ママとお茶することを何よりも大事にする

等々


他にも


・バラ色の眼鏡越しに世界を見ている

・ありふれたものより奇抜さを重んじる

・自分の下手なジョークに真っ先に笑う

・チャチャ、チャールストン、タンゴのステップを知っている

・ブルーな気分の時は爪を鮮やかなサンゴ色に塗る

・果てしなき好奇心を持つ

・自分はベイブ・パーリーの生まれ変わりではないかとこっそり考えている

・iPadを誕生日にもらっても、図書館カードは決して捨てない

・かしこいけれど、そのことを鼻にかけたりしない

・日曜日のマチネ公演に誘われたら断らない

・足取りは軽く瞳は輝いている

・最後のガムの一枚を分けてくれる

・ピクニックをアウトドア・スポーツと見なしている

・シャワーや雨の中で唄う

・ミスター・ダーシーに忠誠を捧げている

・コーヒー・テーブル・ブックをちゃんと「読む」

・四月の雨が五月の花を連れてくることを知っている

・蝶ネクタイに目がない

・グログラン・リボンの使い道を千通り以上思い浮かべられる…等。


気取っているって毛嫌いする人もいるかもしれないし、「現実に存在しそうな女子」に「視点を合わせる」というのがマーケティングというものなのかもしれないけれど、こんな架空の女の子に対するラブレターのような雑誌というのはいつの時代もあるべきであり、こんな女の子になりたいと夢見る心を読者からまるっきり奪ってはいけないと思うのです。


私が「ロマンティック・オ・ゴー!ゴー!」というサイトを始めて、しばらくして(恐らくは十二年くらい前に)書いた文を再掲します。


あなたがもし、


 ラブストーリーはハッピーエンドで終わるべきだと信じるなら

 女優が歌う下手くそな歌が好きなら

 ラジオからふいに流れてきた曲に心臓をつかまれて立ち尽くしたことがあるなら

 映画に出てきたブルーの水着の少女に恋をしたことがあるのなら

 美術館には一人で行くのが好きなら

 古い雑誌から気に入ったグラビアや広告ページを切り抜いて取っておいたことがあるなら

 シャンペンを注ぐ音のようにかすかなヴィブラフォンの響きに耳を傾けるなら

 短編集が好きで、九十分以上ある映画を観るのは躊躇するほど飽きっぽいなら

 エリオット・グールドをスタイリッシュだと思うなら

 冬の寒い日にココアにバター、ホットミルクにラムを落として飲むのが好きなら

 もっと寒い日にはレモン水と砂糖でわったワインを温めて飲むのが好きなら

 喫茶店で文庫本をまるまる一冊読み潰してしまうタイプなら

 プロム・パーティが出てくるアメリカのティーン・ムーヴィが好きなら

 眠りに落ちる直前まで小さな音で音楽を流しておきたいタイプなら

 ウエハースや湯葉といったはかない食べ物が好物なら

 みんなに内緒にしてあるとびきりの自転車コースがあるのなら

 感性によって選択された知性、といったものを信じるなら

 旅先でパスポートや切符が見つからない時に『いつも2人で』を思い出すなら 

 回転ドアを見るたびに『ピンク・パンサー2』を

 カーラジオでクイズを聞くたび『抱きしめたい』を思い出すなら

 午前中の図書館の、水の中のような静けさが好きなら

 朝起きて朝ご飯の代わりに甘いものが食べたいと思うなら

 お気に入りの傍役俳優がいるのなら

 「水に描く」という単語が好きなら

 おしゃれリーダーというと幸田文や向田邦子や白州正子を思い浮かべるなら

 バスルームに雑誌とポータブルラジオを持ち込んで長風呂する習慣があるなら

 夏休みにブラッドベリ、秋の公園ではクリフォード・D・シマック、

 雪が降る日にはジャック・フィニイを読みたいと思うなら

 古本屋の映画パンフレット・コーナーにときめくなら

 2分半かそこらであっけなく終わるポップ・ソングが好きなら

 映画のヒロインと同じ型の服を探してブティックや古着屋をさまよったことがあるのなら

 小説に出てきた料理のレシピを参考にキッチンで何か作ったことがあるなら

 雨の日にボサノヴァを聴くのが趣味なら

 五月になると生きる歓びを感じるなら

 そして、人生には推理小説とティー・ブレイクが必要だと思うのなら


 ほんの少しの間、くだらないお喋りに付き合って欲しいと思う。


 覚えておいても何の得にもならない「ささやかだけど役に立たないこと」ばかりのコンテンツ。それはマニア受けするには少しミーハーが過ぎて、誰もが口ずさめるヒット曲のように気安く、目立たない同級生みたいにすぐ忘れられてしまう。


 このサイト(ブログ)はそんなものを扱う場所です。

 

 十二年前の文章を挙げて、今、もう一度あえて宣言したいと思います。