2011年3月30日水曜日

女優とモード その2




 神保町シアターで再開された特集上映「女優とモード」から、また二本見て来ました。
 『河口』、最高に面白かった!
 実家を支えるために政治家の愛妾となったヒロインが、その政治家の相談役に勧められて銀座で画廊主となる、という話なのですが。
 画廊に関して前のめりなのは相談役の山村聡だけで、ヒロインの岡田茉莉子は絵のことなんか全然おかまいなし。電車の窓から富士山が見えたといっては喜んで、「やっぱり絵より現実の風景の方がいいわねえ」などと言って、山村聡をクサらせるのです。しかし聡は茉莉子のどこを見込んで「初の女画商になれる」なんて思ったのでしょうか。やはり男(親父)転がしのテクか。でも東野英治郎は転がしたつもりで、つきまとわれて困っていましたけれど。
 挙げ句の果てには杉浦直樹演じる貿易商に夢中になって、「妻子がある人だけど、彼に子供を生んでいいって言われたの(フフン)」と浮かれモードに。そんな地に足がつかない茉莉子の有様を見て、心底あきれた聡が「あー、いやだ!」を連発する場面は本当に名シーン。計算高いんだか愚かなんだか謎なヒロインと、絵のこと以外、特に色事に関しては部外者を決め込む野暮天の聡の不思議な絆が面白い。男女の仲でもなければ友達でもない、ウマが合うんだか合わないんだか分からない、でもいいコンビの彼らの関係はニール・サイモンの『おかしな二人』を思わせます。丁々発止でやり合う茉莉子と聡の相性の良さもハンパなかった。
 失恋して自棄になった茉莉子と聡のラストの掛け合いは爆笑もの。いくらでもウェットになりそうな題材を、よくここまでドライに、小気味良く仕上げたものだと思います。
 もちろん、モード特集で取り上げられるくらいだから森英恵がかかわっている衣装も素敵です。和装も良かったけれど、印象に残っているのは洋装の方。上野の西洋美術館前で山村聡と話している時の茉莉子のドレスのプリントは「格闘するバッファロー」…すごい生地を探してきたものです。レオポルド柄のカシュクール・ドレスや、ピンクのスーツに合わせた泡のような形状の不思議な白い帽子もよかった!

ルリルリ主演の『華やかな女豹』の方は、残念ながら『河口』ほど傑作でもファッショナブルでもありませんでした。ルリルリが体重三十四キロ時代に突入、今とさほど変わらないルックスになってしまい、まだ若いのにお年を召してからのオードリー・ヘプバーンのようにハイネックの服しか着られなくなっているのが文字通りネックでした。足は細くて綺麗だからミニドレスがガンガン見せるのだけど、首は皺が目立つから…。ルリルリのファッションだけでいえば、この間見た『結婚の条件』の圧勝だった。
そして「パリ帰りの謎の女」なのに、何故ホテルの鏡台に並ぶ化粧品はみんなメナードなのだ(←十中八九タイアップだから)。


ソース
 バレンシアガのレオポルド柄スーツに身を包んだルリルリ。この服が一番よかった。

 でも歌謡映画としては見所あり。ピーターや弘田三枝子がクラブで代表曲を歌って盛り上げます。収穫だったのはカフェバーに入って来たルリルリがいきなりジュークボックスでかける曽我町子のジャズロック歌謡「謎の女B」。





ソース

「謎の女B/僕をAとする」って歌詞はちょっと片岡義男っぽい。現在、アナログで七インチが再発されているようです。

そして映画のラストを飾るのは、ルリルリ本人が歌う和製ボッサの傑作「シャム猫を抱いて」。 ブレイク・ビーツから入るイントロもお洒落!





 
「シャム猫を抱いて」が収録されている「浅丘ルリ子のすべて」 。ジャケットは横尾忠則。CDはマーケットプレイスでの値段がすごいことになっているので、再発希望です。

 しかしこうなってくると、ルリルリと石坂浩二、そして加賀まり子が顔を合わせたテレビドラマ「新車の中の女」がやはり見たい。原作はセバスチアン・シャプリゾ。読めば分かるが、この頃のルリルリにドンピシャのヒロインなのだ。創元文庫の表紙は旧版の方が好きだなー。



この主題歌(へーちゃん作詞!)とジャケットのスチール写真で更に期待がふくらむ!


シャプリゾは
『シンデレラの罠』も、ミステリ好きな女子の必修科目です!

2011年3月29日火曜日

パーフェクト・プレイス/シーラ・コーラー



沖縄旅行に持っていた文庫本は 『パーフェクト・プレイス』
スイスで療養している女性が、ひとりの男性に「デイジー・サマーという女性をご存知でしょう」と迫られる。
それは南アフリカにいた時代の忌まわしい思い出にまつわる名前…。
スイスからイタリアへ、気怠く退廃的な旅を続ける女性の記憶が、香水瓶の底に残ったパヒュームの香りのように少しずつ立ち上っていく。意識の流れの手法にのっっとった、エレガントでもどかしい文章。熱帯の中の寄宿舎学校と同性愛の気配。少女の残酷さ。
バカンス先で読むのにふさわしい本だった。
シーラ・コーラーの名前は映画『Cracks』の原作者として知った。



『ミス・ブロディの青春』×『乙女の祈り』×『ピクニックatハンギング・ロック』って感じで、名作の予感がする。エヴァ・グリーンは好きな女優ではないが、この映画の「カリスマ性がある女性教師」にはぴったりな感じ。

ファッションがいちいち素晴らしい。

日本公開しないのかな。その際には
原作も翻訳して欲しい。

もう一冊、帰りの飛行機で読んだのが片岡義男の 
『夕陽に赤い帆』。「ハイビスカス・ジャム」と「結婚記念日」。二本の傑作が収録されている。

Gordies






沖縄のバーガー屋さん。

粗挽きのパテがおいしかった。肉の味で勝負、のバーガー。

お客さんの90%は休み時間の米兵+休暇中の米兵の家族で、大変にアメリカンな店内だった。そんな訳で雰囲気も最高。

Cafe yutaの神楽坂スワン オディール



 土曜日限定のブラック・スワン・シュークリーム。向かいは白スワンのオデット。オデットの生クリームも、オディールのチョコレート・クリームとココア味のシューも甘さ控えめで上品な大人味。またに食べに行きたい。

 行く途中、Martini Burgerを通り過ぎた。ここも良さげ!

二月のベスト20




・二〇世紀のポスター[タイポグラフィ]展 東京都庭園美術館


文字の美しさ。商業デザインの美しさ。この美術館らしい企画。


スコット・ピルグリムvs.邪悪な元カレ軍団


ツイッターに興奮気味に書いたのを転記。

「スコット・ピルグリム、最初の十五分で萌え死にしそうです。男子も女子も可愛い子しか出てこない!!!」「『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』、2010年のベストではなく、2010年度(2010/4〜2010/3)のベスト映画を選ぶなら『キック・アス』と『ブラック・スワン』と並んで同率一位です!!」「「文化系ファム・ファタールと出会って、傷つくことでウィンプスターが成長する映画」という側面に関していえば、『スコット・ピルグリム』は『(500)日のサマー』の何千倍も素晴らしい。何故なら女の子たちも学ぶからです」「ルックスもファッションもラモーナはサマーの五百倍クール!」「『スコット・ピルグリム』は新世代映画ファンのための『カジノ・ロワイヤル』であり『ヘッド』であり『何かいいことないか仔猫チャン』である」「ここのところジェシー・アイゼンバーグに心が傾いていましたが、『スコット・ピルグリム』でマイケル・セラへの愛が蘇りました。嬉しい『ブルース一家』リユニオンもあり」「昨日見た『スコット・ピルグリム』。「色々と達観していて、適切なアドバイスをしてくれるゲイの友達」が必要なのはラブコメの女主人公ばかりではないことも教えてくれた。男子の主人公にそんな存在がいる映画は初では。演じるキーラン・カルキン、最高でした!」


・「青い果実」&「見事な娘」at ラピュタ


 源氏鶏太特集にて。


・セピア色の日々/中林洋子


神保町シアター『鑑賞用男性』上映で思い出して買った本。デザイナー中林洋子は日本郵船の船長を父に持つ、大変なお嬢様だということが分かった。二十年代のニューヨークやイギリスの名門寄宿舎学校での話が面白い。彼女だけ通学が許されていたので、毎日学校からリムジンが迎えに来たそうだ。朝吹登水子の自伝小説だって、ここまでお嬢な感じではなかったような。彼女が青鞜社で活躍した原田皐月の姪に当たることも知った。


・仮縫/有吉佐和子


神保町シアターで上映された『華麗なる闘い』の原作。予習用に読んだのだが、ケレン味たっぷりでとにかく面白かった! オートクチュールのブティックに君臨する女王と彼女の座を狙うお針子。『イヴの総て』的な展開になるかと思いきや…「大人ってすごいなあ」。闘いに敗れてもあっけらかんとしたヒロインが印象的だった。ツィード地を模したお洒落な装丁は中林洋子の手によるもの。


・読んでいいとも ガイブンの輪


 片岡義男さんがゲストの回に行って来ました。片岡ワールド全開のトークでファンの私には楽しかった。『ブックストアで待ち合わせ』にサインをいただいた




九段下Factory


ブランチを食べに行きました。エッグ・ベネディクトがおいしかったです。


・モンゴル料理チンギスハン


羊一匹丸ごと食べる会に参加しました。いろんな人がいきなりモンゴル相撲を取らされていました。




・Yarnzのストール


メガネ柄に一目惚れして購入。




・林京子さんのお茶碗


「暮らしのうつわ 花田」の展示会にて購入。

2011年3月14日月曜日

営業報告



 東北地方太平洋震災で被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
 一日も早く、本を読み、映画を見て、音楽を聞き、美しいものを楽しむ、豊かで平和な日々が訪れますように。私も自分が出来ることをしていきたいと思います。

 現在発売中の「Spur Pink」で少女たちに見て欲しい映画を、新作×クラシックの組み合わせで紹介しています。
 
「文藝別冊 石井好子追悼総特集 シャンソンとオムレツとエッセイと」にエッセイを寄稿しました。
 プランタン銀座のエコール・プランタンにて、三月二十六日に「見た目は草食系?中身はオオカミ?“ウィンプスター”な男子」という講座をします。受付と詳細はこちらです。ウィンプスターについてはこちらを参照。ミクシーにコミュニティも作ってみました。是非ともいらして下さい。
 あと、四月二十三日の三時から、大阪のギャラリーでトークショウをすることになりました。場所と詳細については、またお知らせします。
 「本の雑誌」と「FRaU」で取り上げた本は以下の通りです。
エリック・マコーマック
『ミステリウム』
エミール・ゾラ
『パリ』
内田旬子
『身体のいいなり』
熊井明子
『続続・私の部屋のポプリ』
ピエール・リエナール
『王のパティシエ』

先週、朝日新聞のレビューで取り上げてもらった
『イノセントガールズ』はいまだにアマゾンで「在庫あり」にならなくて、ご迷惑をおかけしていますが、営業の方が現在入れてくれているようなので、間もなく出荷出来る状態になると思います。

2011年3月8日火曜日

女優とモード



 神保町シアターで乙女の三月必修科目(なのに客席がオーバー65のオッサンばかりなのはどういうことなのだ)、「女優とモード」の特集上映から三本、見て来ました。
 ちなみにロビーには私が提供した中林洋子のレア本「貴女のためのアイディア」も飾ってあります。
 中林洋子は『観賞用男性』の原案&衣装担当なので、『観賞用男性』の同年に出た中林さんのスタイルブックであるこの本を置いてもらった訳ですが、『華麗なる闘い』の原作本、有吉佐和子の
「仮縫」も提供すれば良かったと後から後悔しました。ツイード生地を使ったシックな装丁は、中林洋子の手によるものだからです! 『観賞用男性』『華麗なる闘い』のコラボだったのに…先月買って読んだばかりだったので、何か持っていくのが恥ずかしかったのです。

 今日見た三本。

 『孤独の賭け』は無理な仕事でのし上がった青年実業家と野心を持ったお針子の恋物語…。これをハセキョーと伊藤英明でどうリメイクしたというのだ。ということばかりが気になって。
 天知茂のビジネスがどんどん失敗していく話が主で、あまり佐久間良子のサクセスとか才能とかは分からなかった。妙に健気な美人秘書が小林千登勢だという事実や、育ちが悪くてきれいな娘の典型として田舎から出て来てヤンキーらしく佐久間の持ち場を荒し回る大原麗子のイキの良さの前にかすんだような。あと、一番お洒落だったのはデザイナーである彼女ではなく、レオポルド柄のコートを成金っぽく着こなし、髪に金髪のエクステ仕込んでいた小暮実千代。
 東映なので、証券会社の社員としてフツーに梅宮辰夫が出てくる。

 『華麗なる闘い』はもうサイコーでした。岸恵子演じるデザイナーと彼女の座を奪おうと考えるお針子の内藤洋子の物語。
 有吉佐和子の原作も面白かったけれど、映画版には更に優れた点が。それは田村正和の存在。原作では表向きは岸恵子の弟、実は完璧にジゴロという役回りなのだけど、正和がやると本当にシスコンの弟に見えて、近親相姦的な雰囲気が漂うから面白い。モッズスーツにサテンやフリルのついたレースのシャツというアホみたいな格好も少女マンガの王子様みたいにナチュラルに似合う。去り際の一言(映画オリジナル)もきれいに決まった。二十年ぶりくらいに正和にときめきました。
 内藤洋子の小娘ぶりもよかった。八木正生のスコアも素晴らしく、サントラが欲しくなったほど。クレージュの服が次々出てくるシックスティーズなファッション・ショーのシーンは、服はもちろんいいもののちょっとむずがゆい部分もありましたが、この映画で何といってもファッショナブルなのは岸恵子の存在。「実際、フランス帰りですけれど何か?」オーラに目もくらむ。事実、五年ぶりの映画出演だったようです。クレージュの白いミニドレス、あの時代のどの日本人が着ても似合わないような難しい服だと思うけれど、恵子の着こなしはパーフェクトだった…細くて美しい脚! あの時、三十七歳か。そうか。

 『おしゃれ大作戦』は聞きしに勝る珍作。何というか、オイルショックが日本の映画から奪った豊かさについて考えさせられました。様々なテキスタイルをバックに妙にベースが太いファンキーなテーマ曲が流れるオープニング・テーマがこの映画の一番お洒落な部分。ところが幕が上がった途端、水前寺清子が歌謡ステージでシングル曲をフルコーラスで歌って、それが本編とまったく関係ないという混乱ぶり。忠臣蔵を下敷きに服飾学院の乗っ取り劇をドタバタとみせるコメディですが、メンバーが沢田雅美だったり、ハリセンボンのはるかそっくりな女子だったりとお洒落でないことはなはだしい。最後は消化器を持って討ち入り。「おしゃれ大作戦」というからには、もう少し服と絡めて欲しかった。服飾学院の建物に使われた建築物はすごく気になりました。あれ、どこなんだろう。