
『河口』、最高に面白かった!
実家を支えるために政治家の愛妾となったヒロインが、その政治家の相談役に勧められて銀座で画廊主となる、という話なのですが。
画廊に関して前のめりなのは相談役の山村聡だけで、ヒロインの岡田茉莉子は絵のことなんか全然おかまいなし。電車の窓から富士山が見えたといっては喜んで、「やっぱり絵より現実の風景の方がいいわねえ」などと言って、山村聡をクサらせるのです。しかし聡は茉莉子のどこを見込んで「初の女画商になれる」なんて思ったのでしょうか。やはり男(親父)転がしのテクか。でも東野英治郎は転がしたつもりで、つきまとわれて困っていましたけれど。
挙げ句の果てには杉浦直樹演じる貿易商に夢中になって、「妻子がある人だけど、彼に子供を生んでいいって言われたの(フフン)」と浮かれモードに。そんな地に足がつかない茉莉子の有様を見て、心底あきれた聡が「あー、いやだ!」を連発する場面は本当に名シーン。計算高いんだか愚かなんだか謎なヒロインと、絵のこと以外、特に色事に関しては部外者を決め込む野暮天の聡の不思議な絆が面白い。男女の仲でもなければ友達でもない、ウマが合うんだか合わないんだか分からない、でもいいコンビの彼らの関係はニール・サイモンの『おかしな二人』を思わせます。丁々発止でやり合う茉莉子と聡の相性の良さもハンパなかった。
失恋して自棄になった茉莉子と聡のラストの掛け合いは爆笑もの。いくらでもウェットになりそうな題材を、よくここまでドライに、小気味良く仕上げたものだと思います。
もちろん、モード特集で取り上げられるくらいだから森英恵がかかわっている衣装も素敵です。和装も良かったけれど、印象に残っているのは洋装の方。上野の西洋美術館前で山村聡と話している時の茉莉子のドレスのプリントは「格闘するバッファロー」…すごい生地を探してきたものです。レオポルド柄のカシュクール・ドレスや、ピンクのスーツに合わせた泡のような形状の不思議な白い帽子もよかった!
そして「パリ帰りの謎の女」なのに、何故ホテルの鏡台に並ぶ化粧品はみんなメナードなのだ(←十中八九タイアップだから)。

でも歌謡映画としては見所あり。ピーターや弘田三枝子がクラブで代表曲を歌って盛り上げます。収穫だったのはカフェバーに入って来たルリルリがいきなりジュークボックスでかける曽我町子のジャズロック歌謡「謎の女B」。

「謎の女B/僕をAとする」って歌詞はちょっと片岡義男っぽい。現在、アナログで七インチが再発されているようです。
そして映画のラストを飾るのは、ルリルリ本人が歌う和製ボッサの傑作「シャム猫を抱いて」。 ブレイク・ビーツから入るイントロもお洒落!
しかしこうなってくると、ルリルリと石坂浩二、そして加賀まり子が顔を合わせたテレビドラマ「新車の中の女」がやはり見たい。原作はセバスチアン・シャプリゾ。読めば分かるが、この頃のルリルリにドンピシャのヒロインなのだ。創元文庫の表紙は旧版の方が好きだなー。
この主題歌(へーちゃん作詞!)とジャケットのスチール写真で更に期待がふくらむ!
シャプリゾは『シンデレラの罠』も、ミステリ好きな女子の必修科目です!
