2011年1月31日月曜日

01/17〜01/30のベスト10



・青春怪談

 神保町シアターの「新春!喜劇映画デラックス」で鑑賞。市川版ではなく、珍しい新東宝の阿部豊版。大好きな
獅子文六の小説のイメージ通りの、モダンな映画でよかった! 安西郷子はてっきり、ヒロインにエス的な感情を持って変な独占欲丸出しのバレエ団の後輩シンデの役かと思ったら、何とヒロインの千春役だった。市川版(未見)の北原三枝の方がどう考えてもハマり役だけど、安西の千春も美少年っぽい断髪のモダン・ガールで悪くなかった。台詞は棒読みだけど。越路吹雪の派手な着物と毛皮のケープも見物。

・朝の波紋/高見順

 シネマ・ヴェーラの五所平之助特集で映画の方を見ようと思って、原作を取り寄せてみた。外資系の貿易会社で社長秘書として働くキャリア・ガールと、彼女のライバル会社に勤めるちょっと浮世離れした男の交流から、敗戦して間もない日本の痛ましさと明日への希望が浮かび上がってくる。都市風俗小説としても面白かったし、何よりも勝ち気なのに情にもろいところがあるヒロインがデコちゃんに、ボンクラに見えるけれど実は深い伊能田が池部良にどんぴしゃ。二人の追悼で見に行こうと思っていたので、三月の上映が本当に楽しみ。

キッズ(・アー)・オールライト

 アネット・ベニングがあんなに男前レズビアンが似合うとは! 整形していない、年相応のルックスがまた素敵だ。レズビアン・カップルの子供たちを演じるミア・ワシコウスカとジョシュ・ハチャートンも、親に気を使っている感じが実にリアルで良かったし、マーク・ラファロは今までのベストでは。自然派シェフの彼が作る料理もおいしそうだった。苺とルバーブのパイ、トリュフで香りづけしたステーキ。それと「アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル」第三シーズン準優勝者の(というより、『アグリー・ベティ』のウィルミナの娘整形後バージョンといった方が分かりやすいのか)ヤヤがなかなかいい役をもらっていた。

・From Here to There:A Curious Collection from Hand Drawn Map Association

くわしくはこちら

サロン・デュ・ショコラ

 来日ショコラティエの異様なまでの多さは、ユーロ下落とやっぱり関係があるのか。「Debailleul」でチョコレートを買っていたら、後ろのブースで何かをくrんであるチョコの説明をしているのか、客にチョコを食べさせているのか、「あなたの中に私がいるわけです」というフレンチ・エロ・トークを通訳させているショコラティエが。もう一度通りかかった時は、「あなたは親切ですね」等、自分が言いたいフレーズの数々の日本語を通訳の人から教わっていた。後でセバスチャン・ブイエであることが判明。ヒットはcoppeneurのショコラトル・スティック。棒の先についたチョコレートをホットミルクに差し入れてくるくる回してホットカカオを作る。最高に贅沢です。



・やっちゃん

 サロン・デュ・ショコラでピエール・マルコリーニのチョコ・ワッフルにも、サダハル・アオキの今川焼き的な何かにも心を動かされなかったのは、新江古田の有名なホルモン屋「やっちゃん」でのお食事会が控えていたからです。とろけるレバ刺しをはじめとする生肉刺身の盛り合わせ、牛もも肉の赤ワインソース添え(これに浸して食べるガーリック・トーストがまた素晴らしい)、煮込み、全てがエクスタシーだった。目を閉じて噛み締め、肉と対話した。

・なんとかしなくちゃ/モニカ・ディケンズ

 ディケンズの曾孫として有名な女子のメイド体験記。昨年末、古本市で手に入れた。三十年代のイギリス上流家庭の感じが裏側から分かって面白いし、田舎の大邸宅に住み込みで働いた時の話はまるで『ゴスフォード・パーク』。何よりも、おっちょこっちょいで粗忽者の女子が失敗しながらどうにかやっていく様子が面白い。たとえていうなら、P・G・ウッドハウス×『ジュリー&ジュリア』って感じ。この人はしょせんお嬢さんで冷やかしでしょ、なんて意見もあるみたいだけど、私はそうは思わなかった。誰だって何か仕事をして生きていかなくちゃいけない。そういう真摯で健気な姿勢があって、気持ちよかった。これは絶版にしておくには惜しい本。女の子同士が「ほら、ミスター・パリッシュのとこでモニカがさ…!」って、共通の話題として普通にこの本がある。そんな地位が似合うのに。

魚匠庵の明太子

 京王の駅弁大会で購入。大変に贅沢な買い物だったけれど、後悔はしていない。卵の粒の感触がシルキーで、最高においしかった。あれでご飯が十杯は食べられる。

・『キラー・インサイド・ミー』のタイトルバック

 こちら。グラフィックとモノクロ写真の組み合わせがレトロで趣味が良い。

・W Magazineの俳優ポートレート

 こちら。それぞれ、普段のイメージを裏切るような写真が多くて面白い。特にかっこいいのがコリン・ファース。たった一人大きく外したのがマーク・ラファロ。

2011年1月27日木曜日

ミッドナイト・キスをするまでに



 この間ようやく『ミッドナイト・キスをするまでに』を見た。マンブルコアのところで紹介したけれど、結論からいうとこれはマンブルコアではない。確かに監督とキャストはテキサスにいた頃からの仲間で、一部キャストをスタッフが兼業しているが、作りが割としっかりしていて、普通の劇映画である。マンブルコアはもっとグダグダでないといけない。
 しかし「気の利いたインディの佳作」ではある。ニューイヤー・イヴにクレイグスリストで一緒に過ごす相手を募った寂しい男を待っていたのは、やけっぱちな女優志望の娘。彼らが新年を過ごすまでを追いながら、ロサンゼルスの街を上手に見せていく。これがロスを讃える映画であることは、男が娘に「君は『要塞都市LA』を読んだかい?」って聞く台詞があるところからも明らか。「ロスは愛が終わる街だよ」と言いながら、二人はオルフェルム劇場をはじめとする歴史的建築物を巡って行く。そうして二人の距離が少しずつ近くなっていく。女子の方は「路上に落ちた片方だけの靴」を写真に撮ってブログにあげている。そんな映画。
 でも、ラストにスコーピオンズの「ウィンド・オブ・チェンジ」をみんなで合唱するところは、いかにも「今」の作品だった。お洒落なインディ映画は現在、パワー・バラードから逃れられないのだ。


2011年1月24日月曜日

From Here to There



 『From Here to There:A Curious Collection from Hand Drawn Map Association』は「手描きの地図」を集めた本。




 ナプキンに殴り書きされたものから、架空の土地の詳細な地図まで、それぞれに物語があって面白かった。中学一年生の女の子が描いた「ロッカーの中の地図」もあれば、それぞれのコンサートで自分が会場のどこにいたかア
ーティスト名で記してある地図、太陽の黒点の位置を示した地図。Google Mapでは辿り着けない場所もある。そんなことを思い出させてくれるチャーミングな本。

右はアレクサンダー・カルダーがベン・シャーンのために描いた自宅への地図



2011年1月19日水曜日

ローヤル・ポートレート


 昨年末、『英国王のスピーチ』を見て、家に帰って真っ先に取り出したのがこの本。『Cecil Beaton:The Royal Portraits』



 本物のジョージ六世。



 若かりし日の現クィーンとマーガレット王女。美少女。

 英国王室を夢のように描いた写真集。「悪役」ウィンザー公夫婦の写真や、少年時代のチャールズ皇太子のポートレートもあります。

 『英国王のスピーチ』は手堅い出来で、コリン・ファースはこれで恐らくアカデミー賞を取ると思うけれど、「吃音演技」に関して言えば『Rocket Science』の リース・トンプソン君の方が上。




 吃音の男子学生が、強気な上級生女子に誘われて討論部に入る話。アナ・ケンドリックの出世作で、ジェイソン・ライトマンはこの映画の彼女を見て『マイレージ、マイライフ』に抜擢した。いい映画なので、せめてDVDが出るといいな。

営業報告


(ミュンヘンの空港)

 近況。
 年末から今月中旬にかけては仕事などで忙しくて精神的にも余裕がなくて、全然インプットが出来なかった。なので、隔週ベスト10は一回休み。
 年越し蕎麦を食べ損ねたので、年初めに浅草の薮蕎麦に行って蕎麦はじめをしてきました。一番最初に試写で見た映画はエガちゃん(デイブ・エガーズ)と嫁が脚本を書いたサム・メンデスの『お家をさがそう』。今年もがんばって仕事をしていきます。

 現在発売中の「エル・ガール」に「世界は十代でまわっている」という記事を書いています。セルフ・プロモーション・メディアを賢く使って世界から注目されている、ティーン・アーティストたちについてのお話です。
 「FRaU」の映画特集号、私はベスト10企画に参加しているのと、ニュー・スターを私の切り口で紹介させてもらいました。すごく可愛くて面白いページに仕上がっているので是非見て下さい。
 「FRaU」の読書日記と「本の雑誌」の新刊レビューで取り上げた本は以下の通り。

ウィラ・キャザー
『マイ・アントニーア』
バーバラ・ピム
『よくできた女』
リディア・デイビス
『話の終わり』
アリス・マンロー
『小説のように』
東海林さだお
『コロッケの丸かじり』
『婚』(百年文庫)
『作家の家』(コロナ・ブックス)

 まだ何か忘れているような…思い出したら追記します。

2011年1月10日月曜日

エルシー・ド・ウルフの本




 クリスマスに注文した古本が海外から届きました。
 『Elsie De Wolfe:A Decorative Life』
 1920〜30年代に活躍したインテリア・デコレーター、エルシー・ド・ウルフの生涯と彼女のデザインを紹介した本。



 見返し。どのページも華やかで可愛らしい。
 彼女のインテリア・デザインをモノクロ写真で見せるだけではなく、シノワズリーやトロンプ・ルイユなど彼女がインテリアに持ち込んだ形式や好んだ素材を使ったコンテンポラリーなデザインや、彼女の室内を描いたジュリアン・ラ・トローブの油彩画などを多用して、飽きさせない作りになっている。


 セシル・ビートンが描いたエルシー・ド・ウルフのポートレート。




 エルシー・ド・ウルフのバスルームを描いたジュリアン・ラ・トローブの作品。鏡張りの壁に白と黒のチェッカー模様の床、赤い洗面台、そして豹柄のカーテンと敷物! ささきふさの小説「豹の部屋」を思い出す。

 高校生の時に読んだ『忘れられた女神たち』で初めてエルシー・ド・ウルフのことを知った。自分に大きな影響を及ぼした一冊だと思う。

2011年1月4日火曜日

干支エクレア



 毎年恒例、ル・ポミエの干支エクレア。うざぎの今年はストロベリー・クリーム。(箱から取り出すとき、耳が欠けた…)

ネズミ、牛、虎と買って来ましたが、来年の龍と再来年の蛇はどうするつもりだと今から(我が家で)話題です。

 そういえば昨年、アニメ版の「海月姫」を見ていたら、ル・ポミエの紙袋が出て来て驚いた。あれは原作も同じ?


2011年1月2日日曜日

初詣



 神田明神に行って来ました。

フラッパーと哲学者



 今年一番最初に読んだ短篇はフィッツジェラルドの『Flappers and Philosophers』に収録されている最初の一編「Bernice Bobs Her Hair」。
 これ、すごく面白かった! 夏休み、ウィスコンシンの田舎から西海岸の都会にある叔母の家に遊びに来た無垢でダサい女の子のバーニスが、辛辣で策士で社交界の花である従姉のマージョリーのアドバイスに従って、「今度、断髪にしようと考えているの」と触れ回って人気者になる話。バーニスに夢中になった男子に自分の崇拝者だった皮肉屋のウォーレンがいることを知ったマージョリーは…。
 マージョリーの意地悪さ、その舌の鋭さ、女子同士の残酷な関係と痛快なラスト、「ゴシップ・ガール」のファンだって大喜びしそう。フィッツジェラルド、女の子同士の会話が本当に上手。「『若草物語』の引用はやめて!」って下り、最高だった。私がこんなに上手いと思うのは他ではホイット・スティルマンかなー。
 発表された1920年当時、断髪がいかに過激だったかも分かるので、モダン・ガール研究をしている人は押さえておくべき一本なのか。「バーニス嬢の断髪異変」「バーニスの断髪宣言」等のタイトルで、過去に翻訳がある。76年には映像化されていて、シェリー・デュヴァルがマージョリー、バット・コートがウォーレンを演じている。ナタ子とスカ子も『ブーリン家の姉妹』じゃなくて、こういうのをやれば良かったのに。

 『Flappers and Philosophers』は、未訳の短篇、翻訳されているけれど本が入手しにくい短篇を中心にちょっとずつ読んでいくつもり。
 デバイン・コメディの「Bernice Bobs Her Hair」

2011年1月1日土曜日

あけましておめでとうございます


 今年もよろしくお願いします。

 寝室のカレンダーはジョナサン・アドラーにしました。

 仕事部屋はいつも新潮社からいただいている書き込み式のものを使っています。こんなにシンプルでデザインがいいものは他に見つからないので。