
「僕は昨日の会話にさえノスタルジーをおぼえる」
ノア・バームバックが24歳で撮った処女作、『彼女と僕のいた場所(Kicking and Screaming)』。
大学を卒業しても大学街に居座ってモラトリアムを続ける四人の青年を描いた話。十年に渡って大学に居座り、あらゆる授業を受けている先輩を演じるのはエリック・ストルツ。
創作文芸科の彼女がプラハに行ってしまって、うじうじするウィンプスターのグローバーがしょっちゅうIDを無くしているのは、彼がアイデンティティそのものを見失っている証拠だ。「今は何もしていない」と宣言する『グリーンバーグ』のベン・スティラーは、十六年後のこの主人公の姿なのである。
フラッシュバックのシーンでふと途切れるラスト。バームバックの個性は既にこの時点で確立されている。
超低予算で、大学構内でゲリラで撮ったシーンも多数というこの映画に、マンブルコア映画のオリジンを見る。90年代のインディ映画で今に通じるスピリットを持つのはこの作品とホイット・スティルマンの『メトロポリタン』、リチャード・リンクレイターの『スラッカー』、ケヴィン・スミスの『クラークス』。ケヴィン・スミス以外の三人が何らかの形でマンブルコア人脈と付き合っているのは偶然ではないのだろう。
舞台となったヴァッサー大学では、『彼女と僕のいた場所』を見ることは通過儀礼になっているという。ジャスティン・ロングも見ただろうか? というか、ノア・バームバックはヴァッサー時代インプロ劇団に所属していたというが、これってジャスティン・ロングがいたところと同じ劇団なんじゃないかと思う。ネットではこの先輩ー後輩の関係はさらえなかった。
それにしても、クリス・アイガーマンの演技は本当に素晴らしい。しょちゅうクロスワード・パズルをやっている皮肉屋の哲学科の学生の役。普通の俳優ならば文学的過ぎて嘘くさい感じるはずの台詞も、彼の口から発せられるとこの上なくリアルに感じる。『メトロポリタン』から始まるホイット・スティルマン三部作といい、得難い個性だ。