2010年7月26日月曜日

ウディ・アレンのコミック・ストリップ


 で、今年の秋のプレッピー・ブームにのっかって、日本のお洒落洋書屋諸君(←何様)に是非入れて欲しいのがこの本であります。


 これは78年から84年まで、デイリー・ミラー紙に連載されていたウディ・アレンを主人公にしたコミック・ストリップ! 連載のタイトルはその名も「Inside Woody Allen」。エロありの大人版ピーナッツ・シリーズみたいで超キュート。作者のスチュワート・ハンプルが50年代からウディ・アレン本人と知り合いだったために実現した企画で、60年代のナードでキュートな男子だった頃のウディをモデルにキャラクターを作ってあるので、絵柄も可愛いのだ。

 シュリンク・ネタに女子との恋愛ディスコミュニケーション・ネタと内容も冴えていた頃のウディ映画みたい。それもそのはず、ハンプルはウディ・アレンが初期に書きためたギャグのメモ・ノートを見せて貰って、一部のコミックはそれを下敷きに描かれているのである。まさしく「オフィシャル」なウディ・アレン・コミックなのだ。これは(ウディ・アレンの映画が未だにお洒落だとされている日本で)もっとキャアキャアワアワ言われるべき本だと思う。
 ちょっと大型本でサイズ的には可愛くないこの総集編には、更に特筆すべきポイントが。序文を、というか、何と序文マンガをバックミンスター・フラーが描いているのである!! ワオ! 
 アメリカでヒップスターが飛びつきそうなこのウディ・アレン・マンガに、私はニューヨークの書店ではなくて、スペインはバルセロナの書店で出合った。バルセロナの青山ブックセンター(←私がそう名づけた)こと「LA CENTRAL」。本当に素晴らしい本屋だった!

今年の秋はプレッピーでいこう

 この秋に出る「プレッピー」な本を紹介しましょう。

 

 Band of Outsiders(及びその女子版であるところのboy from Band of Outsiders)や、ジェナ・ライオンがヘッド・デザイナーになってからのJ Crewなど、私は最近のニューヨーク・ブランドのちょっとヒップな今様プレッピーな感じが大好き。そしてアメリカン・トラッド的なものに弱いところがあります。ちょっとカジュアルだけどSave Khakiなんかも気になるブランド。
 もともと昔から制服っぽいアイテムに目がないのですが、それは私が通っていた私立の中学・高校が私服校で一度もユニフォームに袖を通す機会がなかったことが影響しているのかもしれません。
 今年の五月にニューヨークに行った時は、ラルフ・ローレンのディフュージョン・ブランドであるところのRugbyでスカル・ポイントのポロシャツ等を買い込んだものでした。
 そのRugbyが秋には日本に進出、原宿にショップが出来るということで、まずはめでたい。
 ラルフは好きなのですが、女性の服は何だかものすごくコンサバなマダム服が多い。東海岸上流階級夫人、『ギルモア・ガールズ』のエミリー・ギルモアがよく着ているようなミリタリー調のかっちりした服なんかもあって、メンズに比べても若々しさに欠けるような気がします。これは多くのアメリカン・トラッド・ブランドに言えることで、ブルックスもレディースはロングアイランドでオホホオホホと言ってそうな勝ち組主婦っぽいデザインです。ブラックフリースは可愛いって? 値段の方が可愛くないのよ!
 Rugbyは学生向きブランドですが、同じギルモア家でも21世紀的文化系アイコン、ローリー・ギルモアに似合いそうなフレッシュさがあります。ポイントがスカル・マークというのもひねりがあって好き。 何よりRugbyみたいなファッションが似合うキュートでプレッピーな男子っていいよね! 

 ニューヨークのRugbyショップで営業中のChester French。最終学歴:ハーバード大学(アイビー・リーグ)。

 


 Rugbyの服はこう着こなすべき。Class Actのスタイル・ブロガー、大学生アンジェロくんのスタイリング。『素敵な片想い』の登場人物ではアンソニー・マイケル・ホールを超えてジェイク・ライアンのファッションが今はイン、と主張する男。


 かっこよくタイを緩ませる方法をレクチャーするアンジェロ君

In-Class Presentation: The Loose-Tie Lesson Plan from angelo spagnolo on Vimeo.




 Band of Outsidersを着るマイケル・セラ


 21世紀的プレッピー・アイコン。といえばVampire Weekendのエズラ・クーニグ。最終学歴:コロンビア大学(アイビー・リーグ)。尊敬する人物:ラルフ・ローレン




 Rugbyも可愛いが、マイケル・バスティアンとスポーツ・ブランド「GANT」のコラボ・アイテムも非常にプレッピーで可愛い。日本ではやはり秋にユナイテッド・アロウズが入れるようです。

 ところでプレッピーとは何でしょうか。ファッション用語的にいうと、アメリカの名門大学、いわゆるアイビー・リーグに通うような上流階級の子息たちの由緒正しきスタイルということになりますが、「スタイル」とは何もファッションだけを表す言葉ではありません。生活習慣・様式、メンタル面、全てをひっくるめて「スタイル」。アメリカのコンサバなお金持ちのWASPのスタイルというものがあるとすれば、それが「プレッピー」。
 かつてそんな「プレッピー・スタイル」を笑い飛ばした擬似マニュアル本がありました。その名も『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』。




 アマゾンのマーケット・プレイスの本は高騰しすぎですね。
 1980年に出版されたこの本は決まりきったスタイルに囚われたプレッピーたちを揶揄したパロディ本でしたが、ニュー・トラ、ハマ・トラ全盛期だった日本では大学生たちにライフスタイルのお手本として重宝されました。81年には早くも
翻訳版が出ています。奇しくもアメリカで原書が発売された同じ年には日本で穂積和夫の『絵本アイビーボーイ図鑑』が出版され、VANから連綿と続く日本でのアイビー神話を確固たるものにしたのです。
 そしてアメリカ本国でもJ Crewなどが『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』をファッション・ソースとして使い、冗談本だったはずのこの本は本当のオフィシャルなプレッピー文化を紹介する貴重な資料として残ることになってしまったのです。




 げ、再発版もアマゾンの中古市場で高騰している…。

 日本におけるアイビー・ファッションの聖典といえば、1965年に発売された写真集
『Take Ivy』です。長らく絶版で古本市場でとんでもない価格がついていた本でしたが、このたび何とニューヨークの出版社PowerHouse Booksから再発が決定。こんな本が海外の出版社によってサルベージされたことに驚く人もいるかもしれませんが、アメリカの男子スタイル・ブロガーのページを見ていると、どこで入手しているのか、70年代〜80年代の「POPEYE」「Hot-Dog Press」の誌面をスキャンして紹介しているエントリーに度々出くわします。まさに逆輸入。今様プレッピー・ファッション信奉者たちのお手本は、「日本のアイビー・ファッション」のスタイリングなのです。 
 更にはダメ押しで、『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』の著者の一人であるリサ・ビンバックがブック・デザイナーのチップ・キッドと組んで、この秋『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』のアップデイト版
『True Prep』を出すというではありませんか!
 アメリカのアマゾンのページでは、誌面の一部と撮影風景の動画などが見られます。
 この本の発売ニュースをさらっていて、思いがけないことを知りました。『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』の著者、リサ・ビンバックはWASPではなくユダヤ人だという事実です。(チップ・キッドはどうなんだろう?)
 そういえば、プレッピー・ファッションのアイコンとされる人物の多くはユダヤ人です。ラルフ・ローレンも、ポール・ニューマンも、ウディ・アレンも、(『卒業』のファッションが引用される)ダスティ・ホフマンもみんなユダヤ人。ユダヤ人であるエズラ・クーニングがプレッピー・ファッション/文化の信奉者であることは何らおかしいことではなく、むしろこうした文化系ユダヤ人によって「プレッピー」のイメージか形作られてきたといえるのかもしれません。

 発売は来年ですが、こういう本もでる模様。



 プレッピーといえば…
 私は90年代の渋谷系サウンドで何かアルバム一枚を選べ、と言われたらピチカートもフリッパーズもすっとばしてこれ選ぶな。今聞くと元ネタが分かりすぎるが。



 ところで21世紀的プレッピー・アイコン、女子版はやっぱこの人でしょうか。

2010年7月19日月曜日

カタルーニャのボッサ




 バルセロナに行って痛感したのは、バルセロナは「エスパーニャ」ではなくあくまで「カタルーニャ」なんだということ。
 素晴らしい雑誌「Barcelonés」にはウディ・アレンの『それでも恋するバルセロナ』やカルロス・ルイス・サフォンの『風の影』によって形作られたバルセロナ幻想に対する違和感をまとめた記事が載っていたんだけど、その中に『それでも恋するバルセロナ』の過剰にアモーレでドラマティックなステレオタイプ的「スペイン人」像への反発もあった。
 実際、バルセロナの人々の雰囲気はもっとサラサラした感じで、美女は多いけれどセクシーというよりも清楚な感じだった。
 という訳で六十年代のバルセロナのジャズやボサのヒット曲をまとめたこのコンピのタイトルも
『POP A LA CATALANA』。アメリカのヒット曲のカバーが多いのだけど、janintaの歌う「Soc Molt Poca Cosa」のような素晴らしいオリジナル曲もある。彼女はもう一曲、何とハプニングスの「see you in september」のカバーも収録されていて、それも良かった。キュートな子供ソング「Canco del Telefon」や美女アリシア・トーマスによるトニー・ハッチの「ダウンタウン」のチャーミングなカバーにグルーヴィーな「YEH! YEH!」と聞きどころが満載。ブックレットには各曲のレコード・ジャケットも載っているんだけど、そのセンスが限りなくブラジルのエレンコ・レーベルに近いことも興味深い。洗練されつつも、日本の歌謡ボッサやカバー・ソングみたいないなたさもあって、そこが味だ。
 暑い昼下がりのシエスタのBGMにぴったりな、「カタルーニャ幻想」を運んでくる名コンピであります。


収録歌手の一人、Lita Trorello(コンピに収録されているのはトニー・ハッチの曲のカバー)の「No t'ho dire pas。



 こちらはコンピにも収録されているFrancesc Herederoの「夢見るシャンソン人形」のカバー。

2010年7月18日日曜日

バカンス終わり。営業報告



バルセロナ、楽しかったです。
しかし暑かった。日差しが強くて「痛い」レベル。
スペインがワールド・カップで優勝した夜は感動的でした。
スポーツバーで見知らぬスペイン人とハイタッチ。

行ってる間にリリースされたお仕事の報告を。

現在発売中の「POPEYE」、「テン年代を生き抜く僕らに必要なキーワード」で「ウィンプスター」を紹介しています。
「リバティーンズ」では『ジェニファーズ・ボディ』のレビューを書きました。ホラーとしてもコメディとしても色々難のある作品なんだけど、捨てられないところもあるので是非女の子たちに見て欲しい。
「FRaU」の読書日記と「本の雑誌」の新刊レビューで触れた作品は以下の通り。

ヘミングウェイ
『in our time』
キャンディス・ブシュネル
『SEX AND THE CITY キャリーの日記』
柚木麻子
『終点のあの子』
大橋鎮子
『「暮しの手帖」とわたし』
タチアナ・ド・ロネ
『サラの鍵』
ダイ・シージエ
『月が昇らなかった夜に』
エマニュエル・ボーヴ
『のけ者』
岸本佐知子編訳
『変愛小説集Ⅱ』

『「暮しの手帖」とわたし』は朝ドラにするといいと思います。私の中では花森安治は野田秀樹がやることに決まっています。本人に似ているかどうかはおいといて、前髪パッツンのおかっぱとスカートが似合って、エキセントリックでカリスマがある。ぴったりじゃないですか。

2010年7月8日木曜日

バカンス



7/8〜7/13まで、旅行で留守にします。

メールは受け取ることが出来るようにしておくので、

連絡はメールにてお願いします。

2010年7月5日月曜日

ホリー・ゴライトリーの21世紀



 試写で見損なった『ガールフレンド・エクスペリエンス』を映画館で見た。
 思いがけず、『「SEX & THE CITY」の文化史』にリンクする内容だったので、驚いた。
 一時間二千ドルで体を売るコール・ガール、チェルシーは「ファンタジーなき21世紀のホリー・ゴライトリー」である。
 ホリー・ゴライトリーがニューヨークであんなに自由だったのは、彼女がコール・ガールだったからだ。
 チェルシーもホリーと同じでいつも洗練された黒い服を着ている。マイケル・コースのドレス、ラ・ペルラやキキ・デ・モンパルナスの最高級品ランジェリー、プラダの靴。彼女は自分の楽しみのために買い物はしない。全てが仕事のための投資だ。客筋はウォール街のビジネスマンとお金持ちの文化人。
 コール・ガールだけどピンプはいない。ある種の女性たちが夢見る「独立したセックス・ワーカー」である。だから怖い目にも遭う。ドバイでの仕事(どう聞いても人身売買)を持ちかける男はロシアン・マフィアだろう。後ろ盾のない彼女は、彼の仕事を断った途端にネットで悪評を流される。(ホリーもサリー・トマトの仕事でつまずくと、ニューヨークにはいられなくなる)
 チェルシーには一緒に暮らしている恋人がいる。肉体美を誇るパーソナル・トレーナーの彼は、「時間で体を売っている」という意味ではチェルシーと同じ職業だ。彼は顧客に高い料金のチケットを売りつけようと必死である。
 お仕事としてのコール・ガール業を、クールに、というかソダーバーグらしい(時系列をバラバラにした)スタイリッシュな編集で冷たく描いた作品で、言ってみれば90年代の村上龍の小説みたいな世界観なんだけど、社会学的に色々と面白かった。不況はコール・ガールの足元も脅かす。それでも彼女のお値段はすさまじく高価だ。「コップス」で見る限り、田舎のおばさんの売春価格の相場は一回二十ドルなのだから…。
 ヒロインを演じるサーシャ・グレイが絶妙である。きれいだけど、モデルとも女優とも違うタイプの女の子。上流階級でもないのに、お金のかかったファッションが似合う年の若い女。つまりは高級娼婦の顔をしている。演じるサーシャ・グレイが現役ポルノ女優であることが話題になった。一年に三十本以上のAVに出ているハードワーカー。どこかで見た顔だと思ったら、アメリカン・アパレルの宣伝に出ているのか! アメアパは現役ポルノ女優/男優をキャンペーン・モデルに使ったり、ゲ・マガジン「BUTT」と組んで男裸タオルを出したりと、エグい演出をするのだな。劇中、ヒロインは「人格学」を頼りにクライアントとの相性を探ろうとしてパートナーに呆れられたりしているんだけど、それがアメアパの某支店の店員がみんな同じ占い師を信奉している、という人から聞いた話とリンクしていて、何だかおかしかった。

『ガールフレンド・エクスペリエンス』予告編

2010年7月2日金曜日

営業報告&『「SEX & THE CITY」の文化史』

 『「SEX & THE CITY」の文化史』は無事に完結しました。
 色々と思い入れのある企画だったので、ちゃんと最初のテンションのままやり遂げられてよかった。
 『パリの恋人』から『プラダを来た悪魔』へといたる、Vogueの編集長の変遷、 
『恋は邪魔者』に隠されたCosmopolitanの歴史、『ゴシップ・ガール』からイーディス・ウォートンへと遡り、そこからカポーティの『叶えられた祈り』へと続くアッパー・イースト・サイドの愛憎劇とその観察者たちの関係、そして『ティファニーで朝食を』のホリー・ゴライトリーで始まり『SEX & THE CITY』のキャリー・ブラッドショーで終わる「ニューヨークの独身女性アイコン」の物語。まとめながら、いろんな発見があって本当に楽しかった。好きなことを語り尽くしました。これは書籍にまとめたいです・ていうか、そうします。
 だって皆さん、ホリー・ゴライトリーとキャリー・ブラッドショーの住所がほんのワン・ブロック違いだなんて知ってました? それがどうしてなのか、知りたくありませんか?


 現在発売中の「Voce」の恋愛特集にて、「ジェイン・オースティンの
『説得』に見る復活愛」というコーナーで語っています。美容雑誌を熟読する女子の皆さん、恋愛にはオースティンが効きますよ!

 八月二十八日(日)、銀座プランタンのエコール・プランタンで映画の講座をやります。今回は「サマー・ムーヴィー」「バカンス映画」をちょっと変わった夏の終わりから視点で。時間は14:00〜16:00。今回から
ネットで予約が出来るようになりました。よろしくお願いいたします。
 九月二十六日(日)は大阪の朝日カルチャーセンター中之島教室で「あの女(ひと)の生き方に学ぶ」という講座を。時間は13:00〜14:30。こちらもネットで受け付け中です。最近私が気になっている、素敵な女性たちについて取り上げます。