2010年6月17日木曜日

営業報告と告知

 現在発売中の「キネマ旬報」『パリ20区、僕たちのクラス』の作品評を書いています。
 
シネマ・アピエにも参加しています。今回のテーマは「ミステリー」。私はフェイ・ダナウェイ主演の『アイズ』について書きました。
 「FRaU」の読書日記と「本の雑誌」の新刊レビューで取り上げた本は以下の通り。

 
『野生の探偵たち』ロベルト・ボラーニョ
 
『暗闇の楽器』ナンシー・ヒューストン
 
『1Q84 Book3』村上春樹
 
『文士料理入門』狩野かおり・狩野俊

 2010年を生きたことの証明として、ボラーニョのこの小説は読むべきだと思います。ナンシー・ヒューストンは
『天使の記憶』が大好きで、恋愛小説のピックアップを頼まれるといつも入れたいと思っているのですが、品切れのまま。再版しないかな。

 八月二十八日(日)、銀座プランタンのエコール・プランタンで映画の講座をやります。今回は「サマー・ムーヴィー」「バカンス映画」をちょっと変わった夏の終わりから視点で。時間は14:00〜16:00。今回から
ネットで予約が出来るようになりました。よろしくお願いいたします。
 九月二十六日(日)は大阪の朝日カルチャーセンター中之島教室で「あの女(ひと)の生き方に学ぶ」という講座を。時間は13:00〜14:30。こちらもネットで受け付け中です。最近私が気になっている、素敵な女性たちについて取り上げます。

2010年6月7日月曜日

ニューヨークで好きだったレストラン


 写真はレッドフックのメキシカンCalexio carne asadaの鮮やかな壁。スナック感覚、ちゃんとメキシカン。




 暑い午後に遅めのランチを食べたbowely hotelのイタリアン・レストラン、Gemma。オリーブに白ワインでずっとねばっていたかった。周囲も午後中ずーっとここで過ごそうと決めているような人たち。隣のテーブルでは一人で赤ワインを飲んでいる男性が、ずっとノートに詩を書いていた。




 念願のprune。アンソニー・ボーディンもお気に入りのイースト・ヴィレッジのレストラン。小さくて可愛らしいお店で感動した。パルメザン・オムレツ、マリネしたホワイトアスパラ、シーバスのグリル、鴨の胸肉、素晴らしいデザート。いつかブランチでエッグ・ベネディクトを食べながらブラディ・マリーを飲みたい。



 そして一番印象的だったのがグリーンポイントのEat。アイアンの看板が出ている店構えからして好みだった。ウナギの寝床みたいに奥に細長く伸びているお店だけど、日差しがちゃんと入って気持ちがいい。料理用のパンチボウルを照明の笠にしている、シンプルなインテリアも魅力的だった。




 ここで食べたのはポレンタ。レッドキドニービーンズと春菊、蕪のスライスなどがトッピングされている。野菜の味が濃くておいしい。ここでは、アイス・ティーを頼むとミントとカモミールのブレンド・ティーが常温で出てくる。水も常温。コップはジャムの瓶。まさか「クウネル」で岡尾さんが提唱していたことをブルックリンで実際にやっている人がいるとは…。


 ブルックリンではもちろんEggで素晴らしい朝食を食べました。ウィリアムズバーグに行ったら、絶対にここで朝ご飯食べるべき!

「40歳未満の20人の作家たち」と再録:Lucky Girls



Nell Freudenberger


 New Yorkerでこれから期待される「40歳未満の20人の作家たち」の顔ぶれが発表されました。これからの十年のアメリカ文学のトレンドを決める重要なリストで、入ることは若手の作家にとっては大変な名誉となります。
 日本でも翻訳が出ているのはイーユン・リーと
『アメリカにいる、きみ』のチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ、文芸界の勝ち組夫婦ジョナサン・サフラン・フォアとニコール・クラウスの四人のみ。
 この中で私が「おお! この人が入ったのか」と思ったのは、Book Japanでも書評を書いたKaren Russell、「Tin House」で読んだ短篇が面白かったSarah Shun-lien Bynum、デビュー小説の思わせぶりな設定が話題となったRivka Galchenといった顔ぶれ。私の中では「ケリー・リンク以降」というくくりの中に入る女性作家たちです。
 妥当だと思ったのはJoshua Ferris。そして意外だったのがNell Freudenbergerでした。どうして意外だと思ったかというと…。07年に書いたテキストを再掲します。



 先月の東京国際映画祭、『ダージリン急行』のお供はこの本だった。
 しばらく中断して、この間読了。
 ペーパーバックは何パターンか出ているけれど、この英国版の表紙が好きだ。
ちょうどブルーと黄色でウェス・アンダーソンのカラーだし。収められている物語の舞台の多くはインドだし。
 この著者は、26才だった02年に「ニューヨーカー」の若手作家特集で取り上げられて、話題になった女性である。
 その後、有名出版社が破格の契約金で彼女の処女作品集の権利を買った。
 彼女こそが、「ラッキー・ガール」!と評判になったが、同時にこのトントン拍子のデビューはすごいやっかみにあった。
 ネル・フリューデンバーガーの華々しいデビューに際して、サロン・ドット・コムに掲載されたコラムは辛辣だった。02年の「ニューヨーカー」誌で彼女が評判になったのは、アジアで語学講師をしていたという地の利を活かした短篇の出来においてではない。雑誌にそえられた彼女の著者写真がとびきりセクシーで美しかったこと、「ニューヨーカー」でアシスタントを務めていたこと、ハーバード大学出身の才英であること……その全てが、作家を目指す者のカンに障った。エッセイの作者は、ライターズ・コースに通う若者たちのパーティで、いかに彼女の作品が集中砲撃にあったかを事細かに書いている。同じ号にジョナサン・サフラン・フォアも載っていたのに、誰も彼の作品についてなぞ話さなかったという。そして『Luckey Girl』出版の時は、「ヴォーグ」や「エル」を飾る、ファッション写真のような彼女のポートレイトに呪詛を吐きまくった。
 彼女に才能がないという訳じゃないけれど、こんな幸運に見舞われるのは自分でもいいのに、美しくて(偶然にも)「ニューヨーカー」のアシスタントをしているという強みがあるだけでデビューできる人がいるなんて。こういうことを言われてもしょうがない。
 てなことを書いていたのは、後にデビュー作『Prep』が大当たりするカーティス・シッテンフェルドである。
女子の醜い心理を客観的に描いていて、まあこのエッセイみたいな持ち味が小説でも生きてるんだろうなあと予測される。林真理子とか唯川恵みたいな人なのかしら。
 で、その話題の短編集を読んでみました。
 表題作は妻子ある男性に恋をして、その彼が事故で亡くなった後も彼が住む地に住み続ける若い女性の物語。「The Orphan」は、既に離婚している夫婦がそれを隠して、娘に会いに行く話である。娘も息子もそれぞれに親には理解できない生活と秘密を抱えていて、どんなにとりつくろっても家族が崩壊していることは否めない。
 なるほど、筋立ては取り立てて新しいものではない。しかし、これがインドやバンコクというロケーションの中で展開すると、俄然引き立ってくる。平凡を普遍に変える方程式を彼女はよく知っているようだ。
発売当時はよく『ロスト・イン・トランスレーション』に例えられたというが、それも納得である。ネル・フリューデンバーガーの主人公たちはあくまで西洋人の女性であり、エキゾチックな土地は彼女たちの孤独をほんのりスパイシーに仕上げる小道具なのである。
 だからといって、それが悪い訳じゃない。清潔で、ほの甘くて、ちょっとセクシーでせつない。そういう贅沢なお菓子みたいな味わいがあって、まあ何というかソフィア・コッポラっぽいね。やはり。
 ソフィア・コッポラを目の敵する人と、ネル・フリューデンバーガーに敵意を燃やす人のメカニズムも大変によく似ているし。
 どれか一作といわれたら、やはりPEN/Malamud賞と(確か)O・ヘンリー賞をとったという「The Tutor」だろう。
 父親の仕事の都合でインドに渡り、そこからアメリカの大学を目指して勉強するティーンの少女と、アメリカの大学で学び、そこにも帰ってきた故郷にも馴染めずにいる家庭教師のインド人青年の、恋とも友情ともつかない微妙で甘酸っぱい関係を描いていて、ジャスト『ロスト・イン・トランスレーション』である。二人は帰属する場所を持たない迷い子であり、ほのかなシンパシーを感じている。
父親がインドに来た本当の理由を知って傷ついたヒロインが、家庭教師に髪の毛をなでてもらうところや、二人がブラッドベリの「すべての夏をこの一日に」を語り合う場面なんて胸キュンである。
「レポートを代筆してもらった御礼」という口実で、ヒロインはこの家庭教師と初体験することになるのだが、それも不思議と汚い感じがしない、サラサラとしたラブ・シーンで良かった。
 美人のお嬢さんであることのアドバンテージを感じるねえ。
 後にフリューデンバーガーは自分をディスったシッテンフェルドのエッセイについて、「彼女も今は人気作家で忙しいから、私の作品ではなく顔写真について長々と書く時間もないでしょう」と言っている。

 これが三年前に書いた文章。その後、ネル・フリューデンバーガーは長編も発表しているのだけど、その、ベストセラーになったとか、すごく高い評価を受けたっていう印象がないんだよな…。

2010年6月1日火曜日

告知と営業報告



 講座のお知らせがふたつ!


 八月二十八日(日)、銀座プランタンのエコール・プランタンで映画の講座をやります。今回は「サマー・ムーヴィー」「バカンス映画」をちょっと変わった夏の終わりから視点で。時間は14:00〜16:00。今回からネットで予約が出来るようになりました。よろしくお願いいたします。


 九月二十六日(日)は大阪の朝日カルチャーセンター中之島教室で「あの女(ひと)の生き方に学ぶ」という講座を。時間は13:00〜14:30。こちらもネットで受け付け中です。最近私が気になっている、素敵な女性たちについて取り上げます。


 どちらも楽しい講座にしたいと思っているので、皆さん是非ともいらして下さい。「SEX & THE CITYの文化史」が定員で来られなかった方も。


 それと仕事がいくつかネットに上がっています。

 白水社の「再読愛読」、今回は『ノリーの終わらない物語』について。

 「クレア」の映画特集で取り上げた学園映画も一部ホームページにアップされています。