
例の「ニューヨークを舞台にしたオムニバス映画」は色々と問題アリだった。
どれが良かったといえば、プロム物の(なんと)ブレッド・ラトナー編なんだけど、あのオチにニューヨークという街を託すのは弱い。これ、ニュージャージーだったら良かったのに。アントン・イェルチンの元カノ役で出てくる彼女が一応「ニューヨーク」を(楽屋オチ的に)担っているのか。あとはしいていえばヒューズ兄弟。この二組はPV出身だから短篇をどうしたらいいか知っているってのもある。
(しかし、このクオリティで落選したスカ子の短篇ってどれだけひどいんだろう。DVDになったら特典映像で見られるのだろうか)
「観光客のニューヨーク」でもいいのだけど。前回のパリ編が一応ラスト、それが「観光客のパリ」であることに意味を持たせていたのに比べて、「観光客のニューヨーク」としても全然機能していなのはどうなんだろう。ロケハンのセンスもひどいし。今、ニューヨークで地区別にオムニバスを撮るんだったら当然ブルックリンを中心にしてグリーンポイント、ダンボ、ウィリアムズバーグ、パークスロープ、レッドフック、それからクィーンズ地区、マンハッタンだったらヘルズ・キッチンとロワー・イースト・サイドを入れるのが順当だと思うんだけど。
それで何となく自分にとってのニューヨーク映画っていうのは何なのかと考えてみた。雑誌でニューヨーク映画の特集やると判を押したようにウディ・アレン、カサヴェデス、スコセッシという並びになるんだけど、あれにはみんな飽き飽きだろうし、私が感じるニューヨークっていうのとちょっと違う。ビリー・ワイルダーなんかもこの際、殿堂入りということで省きたい。
ニューヨーク映画には「ホリデイ・シーズンのニューヨーク」っていうサブジャンルがあって、『ホーム・アローン2』『エルフ』『三十四番街の奇跡』などはこちらに入る。
以上のことを考えて、かつ「今日の気分」を反映させた私のニューヨーク映画ベストテンは以下の通り。
1.タイムズ・スクエア(1980)
グラインドハウスとポルノショップが立ち並ぶ八十年代初めのタイムズ・スクエア。ネオン溢れる安全なディズニー・ランドと化してしまった現在のミッドタウンではもはやこんな映画は、いや、映画自体が撮られることはもうないだろう。どのように撮っても、それは航空会社の宣伝フィルムにしかなりえないのだから。
2.メトロポリタン(1990)
五番街から下は滝だと思っているようなアッパー・イースト・サイドの上流階級のティーンたちの群に、ウェストサイドの貧しいインテリの息子が紛れ込む。高校生達が白いドレスとタキシードに身を包み、夜な夜なパーティに繰り出す一連のシーンの臨場感! ヒロインのキャロリン・ファイーナはほぼこれ一作の女優だが、イーディス・ウォートン原作の『エイジ・オブ・イノセンス』には主人公の妹役でチラリと出演した。つまり、正統派のニューヨークWASP令嬢顔だということ。
3.Little Fugitive(1953)
悪戯から自分の兄を殺してしまったと思い込んだ小さな少年が迷い込んだのは、コニー・アイランド。ボードウォークの真下に広がるストライプの影、メリーゴーランド、遊園地中に兄が白いチョークで書くメッセージ……全てが子どもの目を通して見た魔術的な空間になっている。知られざるニューヨーク派、モリス・エンゲルとルス・オーキン夫妻による傑作。トリュフォーはこの作品をお手本に『大人は判ってくれない』を撮った。
4.クローバーフィールド HAKAISHA(2008)
ロワー・イースト・サイドのヒップなアパートに住む男子が、一度ブルックリン橋を渡りかけて引き返し、トランプ・タワー近くのヒロインを救うためにマンハッタンを横断する、その距離感とタイム感が完璧。最後の映像は閉鎖間際のコニー・アイランド。
5.ナタリーの朝(1969)
ブルックリン橋といえばこの映画。ブルックリンからヴィレッジに出てきて、自分を知ったヒロインがラスト、バイクに乗って実家へと帰っていく。その様子がグラフィックになるエンディング・タイトルは涙もの。
6.キミに逢えたら!(2008)
Cakeshopに通い、ライブで夜を明かした後はイースト・ヴィレッジのVeselkaでコーヒーを飲むインディ・ロック好きの少年少女がエレクトリック・レディ・スタジオで結ばれるという00年代的おとぎばなし。
7.Quiet City(2008)
マンブルコア唯一の映像派による長編は、地方から出てきたウェイトレスが無職の青年とパーク・スロープで過ごす二十四時間を詩的な退屈さで綴ったシャイなラブ・ストーリー。
8.大都会の女たち(1959)
画家出身のジーン・ネグレスコによる見事な構図でとらえられたシーグラム・ビルディングを舞台とした元祖『プラダを着た悪魔』。鬼編集長ジョーン・クロフォードにホープ・ラングがいびられる時のシーンまでそっくり。ダイアン・ベイカーが車から飛び降りるシーンが、ストーンウォールで撮られたことがゲイたちを狂喜させる。そしてスージー・パーカーがアパートの窓から飛び降りるシーンのタイミングは『セックス&ザ・シティ』の名エピソード「決断のとき」に影響を与えたはず。最近だと「MADMEN」にも原作本が登場。
9.サボテンの花(1969)
『ザ・バンク』のグッゲンハイム美術館はセットだったけれど、この映画ではちゃんとロケをしている。ミッドタウンに自分の歯科医院を持つウォルター・マッソーとヴィレッジのレコード店に勤めるゴールディ・ホーン。地域に二人の文化と年齢の差が表れている。
10.サイド・ウォークス・オブ・ニューヨーク(2001)
ヴィレッジのレコード店が出てくるといえば、この映画。ソーホーのHousing Works BookStore Cafeにビデオストアと「ニューヨークの恋愛映画」としてのディテールの新しさが目をひく。エドワード・バーンズのロワー・イースト・サイドへの愛も感じるロケハンで、ロシアン・ティー・ルームなんて今時観光客と年寄り以外誰が行くのかよという彼の声が聞こえてきそう。











