2009年11月30日月曜日

わたしのニューヨーク映画ベストテン



 例の「ニューヨークを舞台にしたオムニバス映画」は色々と問題アリだった。
 どれが良かったといえば、プロム物の(なんと)ブレッド・ラトナー編なんだけど、あのオチにニューヨークという街を託すのは弱い。これ、ニュージャージーだったら良かったのに。アントン・イェルチンの元カノ役で出てくる彼女が一応「ニューヨーク」を(楽屋オチ的に)担っているのか。あとはしいていえばヒューズ兄弟。この二組はPV出身だから短篇をどうしたらいいか知っているってのもある。
(しかし、このクオリティで落選したスカ子の短篇ってどれだけひどいんだろう。DVDになったら特典映像で見られるのだろうか)
 「観光客のニューヨーク」でもいいのだけど。前回のパリ編が一応ラスト、それが「観光客のパリ」であることに意味を持たせていたのに比べて、「観光客のニューヨーク」としても全然機能していなのはどうなんだろう。ロケハンのセンスもひどいし。今、ニューヨークで地区別にオムニバスを撮るんだったら当然ブルックリンを中心にしてグリーンポイント、ダンボ、ウィリアムズバーグ、パークスロープ、レッドフック、それからクィーンズ地区、マンハッタンだったらヘルズ・キッチンとロワー・イースト・サイドを入れるのが順当だと思うんだけど。
 それで何となく自分にとってのニューヨーク映画っていうのは何なのかと考えてみた。雑誌でニューヨーク映画の特集やると判を押したようにウディ・アレン、カサヴェデス、スコセッシという並びになるんだけど、あれにはみんな飽き飽きだろうし、私が感じるニューヨークっていうのとちょっと違う。ビリー・ワイルダーなんかもこの際、殿堂入りということで省きたい。
 ニューヨーク映画には「ホリデイ・シーズンのニューヨーク」っていうサブジャンルがあって、『ホーム・アローン2』『エルフ』『三十四番街の奇跡』などはこちらに入る。
 以上のことを考えて、かつ「今日の気分」を反映させた私のニューヨーク映画ベストテンは以下の通り。

1.タイムズ・スクエア(1980)

グラインドハウスとポルノショップが立ち並ぶ八十年代初めのタイムズ・スクエア。ネオン溢れる安全なディズニー・ランドと化してしまった現在のミッドタウンではもはやこんな映画は、いや、映画自体が撮られることはもうないだろう。どのように撮っても、それは航空会社の宣伝フィルムにしかなりえないのだから。



2.メトロポリタン(1990)

五番街から下は滝だと思っているようなアッパー・イースト・サイドの上流階級のティーンたちの群に、ウェストサイドの貧しいインテリの息子が紛れ込む。高校生達が白いドレスとタキシードに身を包み、夜な夜なパーティに繰り出す一連のシーンの臨場感! ヒロインのキャロリン・ファイーナはほぼこれ一作の女優だが、イーディス・ウォートン原作の『エイジ・オブ・イノセンス』には主人公の妹役でチラリと出演した。つまり、正統派のニューヨークWASP令嬢顔だということ。




3.Little Fugitive(1953)

悪戯から自分の兄を殺してしまったと思い込んだ小さな少年が迷い込んだのは、コニー・アイランド。ボードウォークの真下に広がるストライプの影、メリーゴーランド、遊園地中に兄が白いチョークで書くメッセージ……全てが子どもの目を通して見た魔術的な空間になっている。知られざるニューヨーク派、モリス・エンゲルとルス・オーキン夫妻による傑作。トリュフォーはこの作品をお手本に『大人は判ってくれない』を撮った。



4.クローバーフィールド HAKAISHA(2008)

ロワー・イースト・サイドのヒップなアパートに住む男子が、一度ブルックリン橋を渡りかけて引き返し、トランプ・タワー近くのヒロインを救うためにマンハッタンを横断する、その距離感とタイム感が完璧。最後の映像は閉鎖間際のコニー・アイランド。



5.ナタリーの朝(1969)

ブルックリン橋といえばこの映画。ブルックリンからヴィレッジに出てきて、自分を知ったヒロインがラスト、バイクに乗って実家へと帰っていく。その様子がグラフィックになるエンディング・タイトルは涙もの。

6.キミに逢えたら!(2008)

Cakeshopに通い、ライブで夜を明かした後はイースト・ヴィレッジのVeselkaでコーヒーを飲むインディ・ロック好きの少年少女がエレクトリック・レディ・スタジオで結ばれるという00年代的おとぎばなし。



7.Quiet City(2008)

マンブルコア唯一の映像派による長編は、地方から出てきたウェイトレスが無職の青年とパーク・スロープで過ごす二十四時間を詩的な退屈さで綴ったシャイなラブ・ストーリー。

8.大都会の女たち(1959)

画家出身のジーン・ネグレスコによる見事な構図でとらえられたシーグラム・ビルディングを舞台とした元祖『プラダを着た悪魔』。鬼編集長ジョーン・クロフォードにホープ・ラングがいびられる時のシーンまでそっくり。ダイアン・ベイカーが車から飛び降りるシーンが、ストーンウォールで撮られたことがゲイたちを狂喜させる。そしてスージー・パーカーがアパートの窓から飛び降りるシーンのタイミングは『セックス&ザ・シティ』の名エピソード「決断のとき」に影響を与えたはず。最近だと「MADMEN」にも原作本が登場

9.サボテンの花(1969)

『ザ・バンク』のグッゲンハイム美術館はセットだったけれど、この映画ではちゃんとロケをしている。ミッドタウンに自分の歯科医院を持つウォルター・マッソーとヴィレッジのレコード店に勤めるゴールディ・ホーン。地域に二人の文化と年齢の差が表れている。




10.サイド・ウォークス・オブ・ニューヨーク(2001)

ヴィレッジのレコード店が出てくるといえば、この映画。ソーホーのHousing Works BookStore Cafeにビデオストアと「ニューヨークの恋愛映画」としてのディテールの新しさが目をひく。エドワード・バーンズのロワー・イースト・サイドへの愛も感じるロケハンで、ロシアン・ティー・ルームなんて今時観光客と年寄り以外誰が行くのかよという彼の声が聞こえてきそう。

2009年11月25日水曜日

Greenberg



 ノア・バームバックの新作、『Greenberg』が気になる。
 (恐らく)三十代終わりの無職男が主人公。職を探す気もなく、「ここしばらくは何もやっていない」(その年で勇気あるわね、なんて言われたりしている)自分より成功している弟の家に厄介になりにロスに出てきて、昔の友だちとつるんだり、不平不満を漏らしたり、スターバックスに抗議の手紙を書いたりしているだけ。
  何それ。ほとんど、まるっきり、タオ・リンの『イー・イー・イー』の主人公が三十代終わりになった姿ではないか。(予告を見ているとものすごいデジャ・ヴ感のある台詞の数々が)
 しかも、彼とつきあってるんだかつきあっていないんだかよく分からない、投げやりな関係を結ぶヒロインを演じるのがグレタ・ガーウィグ。そんな女優知らないって? 当たり前だよ、彼女はマンブルコア映画にしか出ていない、マンブルコア限定のミューズなんだから。ひとよんで「マンブルコアのメリル・ストリープ」。マンブルコアについてはこちらをどうぞ。
 何てこったい、ノア・バームバックはマンブルコア映画を撮ってしまったのだ!
 主演がベン・スティラーでなかったら、フツーの観客は絶対に見に行かないよ!
 もともとはマーク・ラファロで進んでいた企画だが彼が降板、ヒロインを予定されていたエイミー・アダムスも降りてこの組み合わせになった。
 この雰囲気が良くも悪くも「今」を表しているんだと思う。
 

 

営業報告

 少し先の話ですが、来年の三月のエコール・ド・プランタンの受付が始まっています。今回のテーマは「映画とセレブリティ」。華やかな感じになればなーと思っています。

 「サヴィ」のDVD連載はマーティン・マクドナー監督の『ヒットマンズ・レクイエム』こと『In Bruges』について。
 これ、今年のベスト3には入る大傑作です。
 あんな駄作やこんな駄作が公開されて、これがスクリーンにかからないなんて!世の中間違えている。
 まるでブルージュで撮ったダーク・コメディ版『赤い影』のようだ…と思って見ていたら、ちゃんと台詞にも出てきた。後半出てくるレイフ・ファインズ、『愛を読む人』よりずっといい仕事をしています。
 今年の映画のベストを選ぶ企画を考えているひと、絶対に絶対に見ておいた方がいいですよ。

In Bruges




「TWEE GRRRLS CLUB FANZINE」の四号。インディ・ロックのスターたちに混じってインタビュー受けました。V&CLilmag等で入手可。

「CDジャーナル」の「アメリカ学園天国」は『ゴシップ・ガール』について。日本版でやるならばブレアは佐々木希。そしてゴシップガールの声は絶対に柳原可奈子がやるべきだと思う!「私のコト、大好きだよね?」ってl声がバーチャルに聞こえる。

2009年11月14日土曜日

今年一番の少女マンガ映画



 オースティンの『ノーサンガー・アビー』といえば、乙女の皆さんこの新訳文庫を携えて『ジェイン・オースティン 秘められた恋』をもう見に行かれたんですよね?
まだなら早いところ行くことをお勧めします。ワイズ・ポリシーが倒産したため、さんざん遅れてしかも小規模公開となった作品ですが、これが今年のナンバーワン少女マンガ映画。
 もう日本人をマーティングして作ったんじゃないかと思うような出来ですよ、だって「少女マンガの瞳を持つ女」アン・ハサウェイの相手役にジェームス・マカヴォイだもの。トム・ルフロイとの恋愛話は正直推測というかファンによる妄想に近いものがあるんじゃないかと思っていますが、でもフツー「ストリート・ファイトと娼館通いに明け暮れるアイルランド系ぶしつけ男子」といったら、ジェラルド・バトラーをキャスティングしますよね? 華奢なマカヴォイじゃなくて。おまけにアン・ハサウェイとギリギリ同じ身長……と思ったら実は少し低いくらいで、この映画ではマカヴォイはシークレット・ブーツを履いてるそうです。
 でも、マカヴォイは完璧ですよ。今までも好ましいとは思っていましたが、今回は本当にキュンときました。森で(ジェインの聾唖の弟が目の前で見ているにもかかわらず)我慢できなくなってジェインの唇を奪うシーンは今年を代表するラブ・シーンかも。『トワイライト 初恋』で得られなかった何かがここに!
 オースティンのファンがクスっと笑える『高慢と偏見』(逆パターン)のパロディがあったりと、中身も満足のいく出来。いくつかの衣装は『プライドと偏見』からの使い回しらしいので、マニアは見比べてみては。あとふられ役のローレンス・フォックスが非常によい。いかにもオースティンが書きそうな、「愚鈍なサブキャラ」と見せかけて…という憎い展開。オースティンなんか読んだことがなさそうなギャルっぽい女子たちが試写室で「あの人と付き合えば良かったのに!」なんて言ってました。




 この映画があったので、私は『リヴァトン館』に出てくる詩人の男子はマカヴォイを当てはめて、うっとりと読んでしまいました。表紙は残念だけど、こちらもこの秋の乙女の必読書です。

営業報告

「本の雑誌」と「FRaU」で取り上げた新刊は以下の通り

『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』
ジェイン・オースティン
『ノーサンガー・アビー』
リュドミラ・ウリツカヤ
『通訳ダニエル・シュタイン』
アントニオ・タブッキ
『イタリア広場』
バーナード・マラマッド
『喋る馬』
川上弘美
『これでよろしくて?』

2009年11月12日木曜日

自転車日記




チップ・キッドはデヴィッド・バーン・フォロワーなのに、バーンの『自転車日記』の装丁はやっていないのだな。

歌うブックデザイナー


 みんな大好き、チップ・キッド
 エルロイやコーマック・マッカーシー、米版ハルキ・ムラカミなどで有名なブックデザイナー。


最近だとこんなのや

こんなの

こんなのがチップ・キッド「らしい」デザイン。

作品集



 で、気になるのは彼が率いるバンドARTBREAK
 ジャスト80年代ニューヨークな音。それと、チップ・キッドはパフォーマーとして非常に資質に恵まれている。面白いフォルムと印象的なルックスも含めて。ライブハウスツアーをやったんだって!

 チップ・キッドのデザイン・エレメントがぎゅっとつまったARTBREAKのPV。可愛らしいドラマーは姪だそうです。


CHIP KIDD presents ARTBREAK from gary nadeau on Vimeo.


マーサ・ウェインライト、エディット・ピアフを歌う




 兄ルーファスのジュディに続き! もちろん、という感じでプロデュースはハル・ウィルナー。これが悪い訳がない。
 Amazonのページだと
発売されているのか、来週に延期になったのかよく分からないなあ。12月には国内盤も出る予定。
 
 イギリスのバービカン・シアターでのリハーサル風景

「マッドメン」着せ替え




(from Flickr


 イラストレーター、Dyna Moeによる「Mad Men」トリビュート

 ペーパードール・シリーズ、かわいい。

 ブログからも彼女の「Mad Men」クレージーぶりが伝わる。「Mad Men」プレミアでのこのコスプレ

 そういえばセクシー・ダイナマイト、クリスティナ・ヘンドリックスを私生活で射止めたのって、『(500)日のサマー』でジョセフ・ゴードン・レヴィッドのお調子者な同僚を演じるジェフリー・エアンドなんだね。プライベートではあんなダイナマイト・ボディの美女を嫁さんにしていて勝ち組!


2009年11月11日水曜日

営業報告



 ブックジャパンにジュリー・パウエルの『ジュリー&ジュリア』レビューを書いています。『アマンダの恋のお料理ノート』の隣りに置いて欲しい一冊。アマンダ・ヘッサーも本の中に登場しますよ! 彼女は小さくて華奢なんだけど、すごく威厳がある感じなんだって。温かいスープを飲んだ時みたいに元気が出る本。キッチンに蠅が大発生。水切りの下を覗いてみたらウジ虫びっちりでギャー!なんて、映画版では描かれていなかった失敗談の数々も楽しめます。映画のエイミー・アダムスはもともとお料理が上手そうだったものね。

 現在発売中の「真夜中」に『イー・イー・イー』のイラスト書評が載っています。熊もイルカもかわいい!
 そして「新潮」の都甲幸治さんの連載「生き延びるためのアメリカ文学」には、タオ・リンの新作
『アメリカン・アパレルで万引きを』が登場。タオ・リンという作家に関して、これ以上に的確な評は望めないというような評です。是非一読を。
「思うに、批評家たちはタオ・リンにまつわる情報に振り回されすぎているのではないだろうか。じっくり読めば、彼の作品がオーソドックスなまでに文学的であることはわかりそうなものだ」
「…無常観をベースに書かれた若者風俗だからこそ、インターネットの諸サービスなど、どんなに今風の細部に満ちていても、その裏には死すべき者たちの悲しみのようなものが張り付いているのだろう」
「…タオ・リンは、遠くから見ている大人にはわからない若者の心の闇を、読者が不快になるほど正直に書いているだけなのだ」

2009年11月2日月曜日

「いちばんここに似合う人」の映画

 この冬、新潮社クレスト・ブックから発売予定のミランダ・ジュライの短編集。

 私が特に好きな二編が映画化されていたことを知る。

 「水泳チーム」の予告編などはこちらから。

 もう一編の「あざ」は「White Light」というタイトルで映画化されたらしい。医師の役でキム・ゴードンが出演している!


 短篇だけど見られる機会あるかなあ。
ところで、
『ジーザス・サン』って本国で映画化されているんだけど、そこには看護婦役でミランダ・ジュライが出ているんだよね。こっちもいつか見てみたい。


『Jesus’ Son』予告編

じっちゃんの名にかけて

 サマー→ドリス・デイというエントリーの流れで思い出したんだけど、ジョセフ・ゴードン・レヴィットって、マイケル・ゴードンの孫なのね!
 マイケル・ゴードンはドリス・デイ主演の『夜を楽しく』をはじめとする「健全お色気映画」を数多く撮った職人監督。しかし、この人は実は赤狩りでブラックリスト入りして一時期ハリウッドを追放されていた信念の人でもあるのだ。戻ってきてからはガラリと作風を変えて保守的な娯楽映画を撮るようになったんだけど、この「ヘイズ・コードぎりぎり」のお遊び感覚に私は逆に反骨精神と作家性を感じている。
 ジョセフがわざわざ祖父の名字を加えているのは、映画人として尊敬しているからなんだと思う。

ジョセフのおじいちゃんの仕事

『夜を楽しく』『恋は邪魔者』のこのシーンの元ネタ




キム・ノヴァクをサラリーマン四人で愛人として共有? 実は愚痴を聞いてもらっていただけという『プレイボーイ』

2009年11月1日日曜日

VV嬢のデビュー・アルバム





 ネリー・マッカイ的なマルチ・インスト奏者女子シンガーといえば。
 昨年の今頃、「Crying Blood」のPVを見て一目惚れしたV V Brown嬢のアルバムをこの秋はよく聞いていました。 サマソニのサブステージは彼女→ソラ子というレトロソウル女子の連続公演だったみたいで、そこだけ見たかった。
 雨後の筍的に乱立する英国レトロソウル女子だけど、VV嬢の場合はビートルズ登場以前の初期ロックンロールやドゥー・ワップ、ロカビリーなんかを下敷きにして、そこにピコピコとした80年代的ゲーム・ミュージック的な要素をプラスすることで他と一線を画している。ホーギー・カーマイケルの「Heart & Soul」のメロディを借用した「Crazy Aamazing」なんかも可愛くて好き。
 身長180センチの現役モデルでキャラの立つ女子シンガーということで、「自分で曲が作れるグレイス・ジョーンズ」的な面もあるかと。リーゼント+三つ編みの謎な髪型とか、ファッション・センスも好き。


V V Brown - Shark In The Water

VV Brown | MySpace動画